わらびはまだかいなぁ

 わらびの生えるスロープに、小さな人影。じいさんだ。

 先日、じいさんの小型トラックに乗せてもらったとき、ダッシュボードのところに、帳面からやぶきとられた一枚のメモがテープで留められていた。

         5/7 よもぎ 500g
         5/10 わらび 1K
         坂井直売所

 
 と、あった。直売所(筑北村坂井の直売所『まんだらの庄』)からの注文内容のなぐり書きだった。大丈夫か。折からの天候不順で出荷に間に合うのか心配になった。

 じいさんも気になって、山に見に入ったのだろう。私もスロープを駆け上った。やはり、ヌッくと生えた姿はどこにも見当たらなかった。去年のわらびの屍が広がっているばかりであった。
わらび-まだ
わらび-まだ-拡大
 じいさんも顔には出さないが弱っていることだろう。遠方の、やま間に青白く霞んだ北アルプスを黙って見つめていた。
 私はそれでも芽がないかと、足元に折り重なっているわらびの枯れた枝葉を掻き散らかした。睨んでいるじいさんの視線を感じた。あわてて元に取り繕った。

 けれどもメモにあった、よもぎわらびの文字によって喚起された新鮮なイメージは、なぜか頭について、山菜シーズン到来を予感させた。      平成22年4月末


※.じいさん・ばあさんは、筑北村坂井(旧坂井村)の直売所「まんだらの庄」、『道の駅あおき』直売所にも農産物を出荷しています。
筑北村坂井(旧坂井村)の直売所「まんだらの庄」
青木村の『道の駅あおき』

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